飲食・観光
04月18日
留学生として来日した彼を待っていたのは、食べられるものが見つからない日々だった。その困りごとを事業へと変え、大学院でハラールを研究。YouTubeチャンネル「令和の虎」で融資を得て、自らの店を構えるまでの歩みを聞いた。
Q&A
インタビュー
現在のお仕事を教えてください
今は東京で、イスラム教徒向けのハラール飲食店を2店舗経営しています。ハラールというのは、イスラム教では豚とアルコールが禁止されているため、豚やアルコールを使わない、ムスリムの方々が食べられるものを総称してそう呼んでいます。
どんなお客さんが多いですか
最近は、桜の時期ということもあり、円安の影響もあって、海外からの観光客が多いんです。その中でも、ムスリムの観光客が少しずつ増えています。日本のお客さまは少ないですね。ただ、日本人でムスリムになる方も徐々に増えているので、そうしたお客さまも少しずつ増えています。
事業を始めようと思ったきっかけは
私自身、日本に来てから食材のことでとても苦労しました。2017年に留学生として日本語学校に来た頃は、ハラールのマークがついた肉もあまりなくて。例えばコンビニにカップラーメンがありますよね。その中にも、ハラールのものは全然ないんです。他の食べ物や食材もなくて、本当に困りました。日本には、ラーメンやすき焼き、焼き鳥など、いろいろなお店の看板があるのに、自分が食べられるものはなかったんです。そこで、大学院でビジネス計画という専攻を卒業し、ハラールについての研究を重ねていきました。ハラールを求めるお客さまにさまざまなものを提供し、日本料理をハラール化して、日本の文化と一体化させ、世界に届けたい。そんな志で働いています。
事業はどのように広げてきましたか
最初はラーメンをメインに事業を始めました。その後、焼き餃子にも取り組んでいます。餃子も、日本で専門店としてやっているハラールの餃子店がなかったので、手がけることにしました。今は松戸のほうで小さな商品製造工房を作り、そこでハラール餃子を製造して、ハラールショップやスーパーに卸す準備を進めています。このハラール餃子を最初に計画し、創業する前に『令和の虎』という番組に出演しました。そこで500万円の融資を受けて、今の事業を始めたんです。ブランドのデザインからメニュー開発まで、すべて一人でやりました。妻も応援してくれて、最初にお店をオープンしたときは2人でやったんですね。妻にも自分の仕事があるのですが、それが終わった後にお店に来て、私を手伝ってくれました。そうして今では、2店舗目と工場にまで発展しています。
ラーメン作りでこだわっている点は
ラーメンについては、日本の方のほうが私よりも詳しいと思います。それでも、私ならではの特徴として、他のラーメン店とは違う点として、牛肉チャーシューと鶏肉チャーシューを毎日自分で作っています。今は松戸で自分で作り、それをお店に提供しているんです。まずチャーシューを、肉、バラ肉をきれいな形に整えて巻き、90分ほど煮ます。その後、日本の調味料とウイグルの調味料を合わせています。私はウイグルの出身なので、ウイグル料理の特徴と日本料理の特徴を一つに融合させて、外国の方にも提供しています。
これまでの店舗展開を教えてください
2024年5月に1店舗目を始めて、2025年1月に2店舗目をオープンしました。今、3店舗目についてお問い合わせをくださる方もいるのですが、日本国内ではそれほど店舗を増やすことは考えていません。むしろ、海外に向けて少し考えてみたいと思っています。円安ですからね。今年の年末までに一度、市場調査や現地調査に行ってみたいと思っていて、そのために今、毎日英語を勉強しています。
仕事と生活のバランスはどうですか
今のところ、プライベートの時間は短くて、仕事の時間のほうが長いですね。正直、バランスは良くないと思います。ただ、自分の事業ですから、時間の調整は自由にできます。やりたいことを優先しながら、仕事や事業のことも考慮して調整しているんです。これから5年間、一生懸命頑張って事業を安定させて、その後は少しバランスを取って、仕事から一歩引きたいと思っています。すべてを自分でやるのではなく、専門のプロにお願いして、自分は手を離せるようにしたいですね。そうやって、さらに発展させるために、いろいろと考えています。
今後の課題は何だと考えていますか
課題は、やはりあると思います。今は、いろいろな新しいメニューを開発して、工場のほうで研究しています。料理に関しては、私は調理人ではないので、プロに任せています。そのうえで、自分自身のスキルアップのために、さまざまなビジネスコンテストやスピーチコンテストに参加して、もっとレベルアップしたいと思っています。例えば、スタッフの体制をどう計画するか、スタッフの教育をどこからどこまでやる必要があるか。そういったことを学びたいですね。これまでこうした事業をやった経験がないので、いろいろなことを勉強しながら進めています。
お金よりも大切にしていることは
お金のためではないですね。もしお金のためだったら、こういう事業ではなく、もっと簡単なビジネスを選びたいと思います。例えば、中国製のものを仕入れて、安いものを買ってきて、上野公園のあたりでテントを張ったり、キッチンカーで販売したりすれば、それでもお金は儲かります。でも、それでは自分の志を伝えることができないんです。事業というのは、自分の子どものようなものだと思っています。一生懸命、愛情を注がなければなりません。そういうビジネスマンにはなりたくないですし、手っ取り早くお金を稼ぐために動くビジネスマンにも、なりたくないんです。
これからの人生をどう描いていますか
今は、割合でいうと80%くらいの力で取り組んでいます。55歳までは80%で続けて、その後は20%に変えようと思っています。55歳になれば、人の人生の意味が分かってくると思うんです。人生というのは、簡単に言えば、仕事をすることだけではないと思います。いろいろなものを体験して、いろいろなものを見て、そして考える。そういう時間も作らなければいけませんね。これまでウイグルで30年、その後、日本で10年、いろいろなことをやってきました。これから15年は海外に向けて取り組んで、55歳で引退しようと思っています。そして、それまでの経験や考えたこと、出会った人や、いろいろな人から受けた影響を全部まとめて、本を書きたいんです。自分の経験、人生の経験を後輩たちに伝えたい。そのために頑張っていきたいと思っています。
子どもたちへの思いはありますか
働いて、その成果を見ることができれば、それは幸せなことだと思います。というのも、私自身、結婚して、来月には息子が生まれるんです。サラリーマンとして、いろいろな会社で働いている方々もいますよね。子どもたちは、親がやっていることを見ながら育っていきます。でも、私たちはビジネスをやっているので、思いもよらないような挑戦が必要になります。それを私たちが一生懸命やっていく姿を子どもたちが見れば、彼らも将来、私たちよりも大きなチャンスや、良いチャレンジに挑めると思うんです。しかも、子どもたちは日本語が堪能で、日本の教育を受けています。その後、私たちが海外に出店できれば、そちらにも行って英語の教育も受けられる。そうやっていろいろな文化を混ぜ合わせて、私たちよりも成功できると思っています。
これから起業する人へメッセージを
まず、私たち自身もまだ成功しているわけではありません。そのうえで、起業する方にお伝えしたいのは、先ほども少し触れましたが、月を目指して石を投げれば、たとえ月に届かなくても、木のてっぺんくらいには立てる、たどり着けるということです。ですから、自分のやりたいことに挑戦してほしいんです。私がこうして飲食店をやっているのも、ある先輩から受けた影響なんです。その先輩は、ウイグルで170店舗ほどのホテルや飲食店を手がけていて、今はアメリカやドイツで国際的なビジネスをしています。その先輩に『将来の夢は何ですか』と聞かれたとき、私は100店舗くらいを考えていました。すると、『100店舗を目標にすると10店舗で止まってしまうから、1万店舗を目指しなさい』とアドバイスをいただいたんです。ですから今、ビジネスをやっているパートナーや友人たちに伝えたいのは、もっと大きなビジネス、大きな計画を考えたほうがいい、ということです。多くの人は、一生懸命に計画を立てて、その実現のために頑張らなければなりません。お店を立ち上げようと考えた最初の瞬間から、1万店舗の計画を描く。こういうビジネスモデルがあれば1万店舗に広げられる、というシステムを作る。そういう形で実現できれば、成功できると思います。
話し手プロフィール
株式会社三休
ディリヤアル・アブドゥレイム(Dilyar Abdurehimu)
東京都
1988年生まれ。新疆ウイグル自治区出身。2017年に留学生として来日し、日本の大学院でコンテンツ企画を学ぶ。
卒業後は東京で起業し、ハラール対応の日本食ブランド「SANKYU」を設立。現在は東京都内で2店舗の日本料理店と食品製造工場を運営し、日本の食文化を世界へ発信している。
これまでにメディア業界、飲食業、食品製造業、海外事業開発など幅広い分野で経験を積み、「日本と世界をつなぐ」をテーマに事業を展開。特にハラール市場や海外フランチャイズ展開に力を入れ、カナダやインドネシアなどへの海外進出プロジェクトを進めている。
また、日本で暮らす一人のウイグル人起業家として、SNSや動画を通じて「リアルな日本」を世界へ紹介する情報発信にも取り組んでいる。観光だけでは伝わらない日本の文化、ビジネス、生活、サービス、ものづくりを、自身の視点で分かりやすく発信し、多くの海外視聴者から支持を集めている。
ビジョン
「日本の素晴らしい食文化とサービスを世界へ。」
飲食事業だけでなく、コンテンツや教育、海外展開を通じて、日本と世界をつなぐ架け橋となることを目指している。日本で培った経験を活かし、世界中の人々に価値あるサービスと新たな挑戦の機会を提供し続ける。
卒業後は東京で起業し、ハラール対応の日本食ブランド「SANKYU」を設立。現在は東京都内で2店舗の日本料理店と食品製造工場を運営し、日本の食文化を世界へ発信している。
これまでにメディア業界、飲食業、食品製造業、海外事業開発など幅広い分野で経験を積み、「日本と世界をつなぐ」をテーマに事業を展開。特にハラール市場や海外フランチャイズ展開に力を入れ、カナダやインドネシアなどへの海外進出プロジェクトを進めている。
また、日本で暮らす一人のウイグル人起業家として、SNSや動画を通じて「リアルな日本」を世界へ紹介する情報発信にも取り組んでいる。観光だけでは伝わらない日本の文化、ビジネス、生活、サービス、ものづくりを、自身の視点で分かりやすく発信し、多くの海外視聴者から支持を集めている。
ビジョン
「日本の素晴らしい食文化とサービスを世界へ。」
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